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列車に揺られながら、少年は一人、高速で移りゆく景色に視線を送っていた。せり出た窓枠に頬杖をつき、機械じみた見慣れぬ景色で眺めている。
立ち並ぶ高層ビル、大量に交差する道は上と下とに分かれ、素早く車が走り去る。目にする街並みも鮮やかな電灯が多く、目がチカチカした。
そんな景色でも、少年にとっては好奇心をはじき出す恰好の獲物だった。
まず最初に思ったのは、森が──緑が極端に少ない。人が多過ぎることだった。
一つの場所に密集し、列車内がすし詰め状態になった時はどうしようかと思った。窒息するのではないかと。目的地に近付くにつれ、圧迫が減り続けた時は安堵の溜め息が出た。
あんな経験がこれからも続くとなると、もはや逃げ出したい気分だった。だが二度目だ。そしてまだ二度目だ。慣れない。
一度目は実家近くの村から、車や列車で目的の都市、ソフタルムスに向かった時だ。
実家からの付き添いと共にゲート付近で待っていると、老人の男性が現れた。彼と共にゲートを抜け、ソフタルムスに入り、帰る家に案内された。
その時に初めて空中都市の中身を目にした。
それにしても何故、ずっと下で生きてきた自分は、こんなにも容易く中へ入れたのか。不思議に思ったが、信じて話せる者もいなかった。
疑問を抱いたまま第二の自宅を出発し今に至る。
目的地まで後二駅。
少年は窓から顔を離した。そろそろ腕も疲れたし、何よりも向かいに座る男の視線が気になる。眼帯で右目を覆っているものだから、それが珍しいのだと思っていた。
少年は男を一瞥し、また視線を反らした。
「よお」
気に掛けるのが良くなかった。ついに男が声を掛けてきた。
無視することができなかったらしい少年は、向かいへと首を動かした。
スーツに身を包んだ男は、四十半ばくらいだろうか、若々しい顔の割には頭が禿げ上がっている。
少年は何ですかと答えた。
「フロントーサに行くんだろう? 此処まで乗り継いでくる奴の目的地なんざ、あそこしかねぇ」
その通りだった。少年は軽く頷いた。
「俺もそこに行くんだ。おめぇは、何の用だ?」
「……。転入の確認と……、試験があるって……聞かされて」
「そうかそうか」
男は機嫌良く笑い声を上げた。何がそんなに楽しいのか分からない少年は、素っ気なく視線を外した。
「どうせなら受付まで案内してやるよ」
少年は意を介さなかった。
終点に着くと、二人は列車を降りた。
少年は駅構内を見渡した。男と二人だけである。どうやら他に客はいないらしい。
男に促されて駅を出ると、すぐ目の前が目的の場所であるようだ。男が建物を指さして、あれがフロントーサだ、と言った。
「エントランスまでついてってやる。こっちだ」
時計の針は昼過ぎを指している。指定された時間には間に合った。
少年は黙って男の後を追った。
「ここで待ってな」
男は少年をエントランスにある控えのソファに座らせ、無数にある廊下の一つへと姿を消した。
どんな素性の人なのか、少年は漸く男を不審――とはいかなくとも、疑問を持ち始めた。
数分後、現れたのは女であった。男は姿を見せない。
「こんにちは。あなた、シエルね?」
女は目の前まで来るやいなや、少年の名らしきを口にした。まだここへ来て誰にも名乗っていない。身なりの特徴でも伝わっているのだろうか、シエルと呼ばれた少年は頷いた。
「良かった、学園長が間違いないって言うものだから、違ったらどうしようかと思ったわ。初めまして、私の名前はシュゼット――シュゼット・ブトナよ、よろしくね」
シュゼットは愛想良く笑い、片手を差し出した。シエルもそれに応える。
これから役二年間、彼女がシエルの担当を請け負うのだと言う。
「あの、」
「ん?」
「学園長……って、まさか……」
「ああ、さっき君が一緒にいたあの禿げたおっさんよ。ごめんね、おかしな人なの。……――名乗ってなかったのね……」
最後の一言は独り言の領域だった。
「ウルザス・ニロティカ学園長よ。また会うことになるわ。──とりあえず今日は試験ね。コンディションはどう? 緊張してる?」
可もなく不可もなくと答えると、一瞬驚いたような顔をしたシュゼットは、試験会場に案内すると言って歩き出した。
会場へ向かう道中、彼女に試験は実技だ、知らされているはすだ。と聞かされた。もちろん知っているわけだから、そう答えた。
「武器はトゥハンドソードだったわね。前もって送ってもらったデータから、同じ質量のものを拵えたわ。それを使ってちょうだい。直前に渡すから。しかし君、あんな重い武器を使うのね。吃驚したわ」
シエルは頷いた。何に大しての頷きだったのか、シュゼットは聞くこともなかった。
教室の場所を教えられると、
立ち並ぶ高層ビル、大量に交差する道は上と下とに分かれ、素早く車が走り去る。目にする街並みも鮮やかな電灯が多く、目がチカチカした。
そんな景色でも、少年にとっては好奇心をはじき出す恰好の獲物だった。
まず最初に思ったのは、森が──緑が極端に少ない。人が多過ぎることだった。
一つの場所に密集し、列車内がすし詰め状態になった時はどうしようかと思った。窒息するのではないかと。目的地に近付くにつれ、圧迫が減り続けた時は安堵の溜め息が出た。
あんな経験がこれからも続くとなると、もはや逃げ出したい気分だった。だが二度目だ。そしてまだ二度目だ。慣れない。
一度目は実家近くの村から、車や列車で目的の都市、ソフタルムスに向かった時だ。
実家からの付き添いと共にゲート付近で待っていると、老人の男性が現れた。彼と共にゲートを抜け、ソフタルムスに入り、帰る家に案内された。
その時に初めて空中都市の中身を目にした。
それにしても何故、ずっと下で生きてきた自分は、こんなにも容易く中へ入れたのか。不思議に思ったが、信じて話せる者もいなかった。
疑問を抱いたまま第二の自宅を出発し今に至る。
目的地まで後二駅。
少年は窓から顔を離した。そろそろ腕も疲れたし、何よりも向かいに座る男の視線が気になる。眼帯で右目を覆っているものだから、それが珍しいのだと思っていた。
少年は男を一瞥し、また視線を反らした。
「よお」
気に掛けるのが良くなかった。ついに男が声を掛けてきた。
無視することができなかったらしい少年は、向かいへと首を動かした。
スーツに身を包んだ男は、四十半ばくらいだろうか、若々しい顔の割には頭が禿げ上がっている。
少年は何ですかと答えた。
「フロントーサに行くんだろう? 此処まで乗り継いでくる奴の目的地なんざ、あそこしかねぇ」
その通りだった。少年は軽く頷いた。
「俺もそこに行くんだ。おめぇは、何の用だ?」
「……。転入の確認と……、試験があるって……聞かされて」
「そうかそうか」
男は機嫌良く笑い声を上げた。何がそんなに楽しいのか分からない少年は、素っ気なく視線を外した。
「どうせなら受付まで案内してやるよ」
少年は意を介さなかった。
終点に着くと、二人は列車を降りた。
少年は駅構内を見渡した。男と二人だけである。どうやら他に客はいないらしい。
男に促されて駅を出ると、すぐ目の前が目的の場所であるようだ。男が建物を指さして、あれがフロントーサだ、と言った。
「エントランスまでついてってやる。こっちだ」
時計の針は昼過ぎを指している。指定された時間には間に合った。
少年は黙って男の後を追った。
「ここで待ってな」
男は少年をエントランスにある控えのソファに座らせ、無数にある廊下の一つへと姿を消した。
どんな素性の人なのか、少年は漸く男を不審――とはいかなくとも、疑問を持ち始めた。
数分後、現れたのは女であった。男は姿を見せない。
「こんにちは。あなた、シエルね?」
女は目の前まで来るやいなや、少年の名らしきを口にした。まだここへ来て誰にも名乗っていない。身なりの特徴でも伝わっているのだろうか、シエルと呼ばれた少年は頷いた。
「良かった、学園長が間違いないって言うものだから、違ったらどうしようかと思ったわ。初めまして、私の名前はシュゼット――シュゼット・ブトナよ、よろしくね」
シュゼットは愛想良く笑い、片手を差し出した。シエルもそれに応える。
これから役二年間、彼女がシエルの担当を請け負うのだと言う。
「あの、」
「ん?」
「学園長……って、まさか……」
「ああ、さっき君が一緒にいたあの禿げたおっさんよ。ごめんね、おかしな人なの。……――名乗ってなかったのね……」
最後の一言は独り言の領域だった。
「ウルザス・ニロティカ学園長よ。また会うことになるわ。──とりあえず今日は試験ね。コンディションはどう? 緊張してる?」
可もなく不可もなくと答えると、一瞬驚いたような顔をしたシュゼットは、試験会場に案内すると言って歩き出した。
会場へ向かう道中、彼女に試験は実技だ、知らされているはすだ。と聞かされた。もちろん知っているわけだから、そう答えた。
「武器はトゥハンドソードだったわね。前もって送ってもらったデータから、同じ質量のものを拵えたわ。それを使ってちょうだい。直前に渡すから。しかし君、あんな重い武器を使うのね。吃驚したわ」
シエルは頷いた。何に大しての頷きだったのか、シュゼットは聞くこともなかった。
教室の場所を教えられると、
映画(アクション、ホラー、ファンタジーばっか)、ゲーム(PS3&4、ネトゲ、ソシャゲ)、PC関連、動画、アニメ、コミックス。犬。時事ネタはあんまりないです。
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