×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
一人の少年が城の、少し高い位置から外を眺めていた。肩まで伸びた艶やかな黒髪が、時折風に揺れる。
今日はやけに騒がしい。
確認しようとその騒動のもとへと降りていくと、侍女達が忙しなく廊下を駆け回っている。
数人は部屋の中、数人は庭を。
一人に近寄り、「どうしたの?」と声を掛けた。
少年の姿を確認した侍女は、慌てて頭を下げる。どうやら少年は城でも身分の高い位にいるようだ。
「若様、只今、少女を探しておりまして……!」
――少女?
少年は首を傾げた。
城に少女なんていたかと思い出すが、少女の姿など侍女でしか目撃したことがない。
「何で探してるの?」
「それが……、座敷牢にいた者なのですが、何者かが鍵を壊したらしく出て行ってしまって……」
「何者かって、父上の封印はそんな簡単に解術できる者なんていないよ」
「ええ。そうなのですが……」
侍女は言葉を濁らせた。
実際そうだ。この城の君主は、この幻妖の世に君臨する王――絶大な力を誇る覇王だった。
その王が仕掛けた封印を易々と解くことができる人間は、未だかつて皆無に等しい。
「その子が壊したのかな」
「……そんな、まさか」
「でも城には誰も入れないし。きっとそうだよ」
侍女は口を噤んだ。
「僕も手伝う」
「そんなッ、若様の手を煩わせるようなことできません!」
「いいんだ。もし本当にその子が解術したのなら、ちょっと会ってみたい」
再び黙り込んだ侍女は、最早若様と呼ぶ少年を止める術を持っていなかった。
彼に手伝いの礼を言い、二人は別れた。
「さてと、どこから探そうかな」
解術できたとしたら、城の外にも出ているかもしれない。
少年は急いで門の方へと向かった。
「ねぇ、女の子見なかった?」
「女の子、ですか?」
片手に槍を持った屈強な男は、頭に疑問符を浮かべた。
正門を守る門番の一人だ。頭に一本の角を生やしている。若様と呼ばれた少年の前でそんな者が通っていっただろうかと首を捻った。
だが少女が出ていった形跡などない。門番は「見ておりません」と申し訳なさそうに伝えた。
「本当に?」
「ええ。怪しいものならすぐに分かりますから」
では少女はまだ城の中にいるのだろうか。
少年は門番に礼を言い、その場を去った。
少女は何者なんだろう。
少年の中でますます興味が膨れ上がった。
父親の凄さを知っているからこそ、彼の城にいながら行方の知れない少女に会ってみたいと思うのだ。
さて、次はどこへ行こうか。
少年は四季折々の花々が咲き誇る不思議な道を歩きながら、辺りを伺っていた。
目を凝らし、神経を研ぎ澄ませるが気配は感じられない。
どこへ行ったんだろう。何者なんだろう。――どうして閉じ込められていたんだろう。彼女は、やはり罪人なのだろうか。
そんなことを考えながら歩いていると、不意に腕を取られた。
しかし少年はバランスを崩すことはなく、逆に取られた腕を引き、自分の方へと犯人を引き寄せた。
そして彼は目を疑うこととなる。
「びっくりしたぁ。凄いな、君。女の子みたいなのに力あるんだね」
腕は可憐な花々が咲き誇る垣根の中から伸びてきた。当然、その姿も花や葉を散らせながら垣根から出てくる。
腕を掴む白い手の持ち主は、その可憐な花々に負けず劣らず、明るいブラウンの髪を靡かせ、漆黒の瞳を持つ美しい少女であった。
舞う花びらの演出も相まって、美しさをより一層際立てた。
よろけながら姿を現し、素直にそう述べたのである。
「……君、誰?」
少年は思わず疑問を口にした。
「あたしは……。って言うか、ここどこ? 何か急に知らないとこに来ちゃって。ここ日本?」
「にほん?」
「ほら、お城あるし。みんな着物着てたし。あと、日本語喋ってるし!」
「ごめん、君が何を言ってるか分からないんだけど」
「嘘でしょ!? だって君おんなじ言葉喋ってるじゃん!」
「そうなんだけど……。そう言うことじゃなくて……」
少年は少女の気迫に押され、少年は後ずさった。
言葉は通じるが、意味が分からないのだ。
“にほん”とは何なのか。それだけだった。少女がその“にほん”から来た、と言うことは誰でも分かることだ。
「ここはにほんじゃないよ」
「……嘘。だったらどこなの。あたしどこにいるの?」
活発だった少女からみるみる元気が失われていく。
どうやら知らない土地から連れて来られ、気持ちが沈み掛けているらしい。
少年はどうしようかと考え込んだ。
「そうだ、聞きたいことが沢山あるんだ。こっそり僕の部屋に行こう。侍女達が君を探してるけど、きっと僕の部屋なら見つからないよ」
「……いいの?」
「大丈夫。抜け道あるし」
少女は暫く考え込んだあと、ゆっくりと頷いた。
「ところで何で僕の腕を掴んだの?」
「周りみんな大人ばっかりでさ、あそこに隠れてたら君が通りかかって。それで思わず」
「そうだったんだ」
一人では使い切れないだろう広い座敷に二人はいた。敷物に向かい合うようにして腰を下ろしている。
これが少年の部屋なのだろうか。
少女は辺りを見渡した。何もない部屋だ。
「何にもないね」
「うん。必要ないからね」
「君、変わってるね。セレブだからかな」
意味の分からない単語に疑問符を浮かべたが、あえて聞き返そうとはしなかった。
彼女は恐らくこれからも知らない単語を話すだろう。それに一々突っ込んでいてはきりがない。
下界の人間は独自の言葉を持っていると思えばそれで良かった。
「ねぇ、名前教えてよ」
少女だった。
「じゃぁ、君から」
「何でよ」
「普通名前を尋ねるときは自分からだろ」
そう言うと少女は嫌な顔をした。
そんな表情に少年も顔を歪めた。何がおかしいのか。
「ふっるい考え方」
「……」
見た目は可憐な美しい少女だが、性格はどうも違っているらしい。
大人しくもなければ、実に勝気であった。
少年はため息をつき、「夜斗」と言った。
少女が一瞬きょとんとした表情を取った。今度はその言葉が何なのか、少女の方が理解できなかったようだ。
「僕の名前」
「……夜斗って言うの?」
「そうだよ」
「変わってるけどかっこいいね。あたしは真琴。宮藤真琴」
「なんか、名前長いね」
「なんでよ。君と一文字だけでしょ」
「くどうまことだろ?」
「宮藤は苗字! 名前は真琴だけなの!」
今度は夜斗がきょとんとなり、真琴は顔を歪めた。
「君はバカなの?」
「違うよ。苗字なんてものはこの世界にはないんだよ」
「ええ!? ないの? ……そっか、そうなんだ。だったらあたし凄い貴重な人間じゃん!」
映画(アクション、ホラー、ファンタジーばっか)、ゲーム(PS3&4、ネトゲ、ソシャゲ)、PC関連、動画、アニメ、コミックス。犬。時事ネタはあんまりないです。
※画像表示にJavascriptを使用しています。ブログ内の画像は無断転載禁止です。
Calendar
Search this blog
Profile
HN:
平野ペロ
HP:
性別:
女性
職業:
クリエイター事務職
趣味:
仕事、同人、執筆、イラスト制作、旅行
自己紹介:
Category
News story
(02/21)
(02/20)
(02/20)
(02/20)
(02/20)
PIXIV
本棚
New Comment
Affiliate